変わる企業法務

企業法務が独立した業務になったのは、戦後の混乱期を過ぎ、高度経済成長期から、経済安定期に入った、昭和後期からです。それまでは、企業が法的問題を抱えるのは、裁判が起こされてからでした。しかし、最近は、インターネットで情報が流れ、拡散するスピードが非常に速くなっています。企業が法的問題を起こすと、その事が、日本国内だけでなく海外にも情報が流れ、すぐに、全世界に知られてしまいます。この事が、企業イメージをダウンさせ、業績にもすぐに、関係してしまうのです。

これからの、企業法務が担う重要な課題は、いかに法律的問題を起こさない企業にするかが、課題になっていきます。今までは、問題が起きた時に、どう対処するかが重要でしたが、そうでは無く、問題を起こさないようにするには、どうするかが重要なのです。

つまり、企業内の人達に対する、法律遵守(コンプライアンス)の教育が必要なのです。問題を起こした場合、企業が被る損害は予測が出来ません。企業イメージがダウンした場合は特に、計算や予測は出来ないのです。法令遵守の教育に掛かる経費は、事前に明確になります。事前に弁護士と顧問契約を結んでおくことで、万が一に備えておくことも大事でしょう。問題が起こってからの対処ではなく、問題を起こさないようにするのが、これからの企業法務に期待される事なのです。

企業法務で重要な事

企業が活動する上で、関係する法律は沢山あります、それらをすべて理解している経営者や業務管理者はいないでしょう。通常は、問題が起きてから対処するのが一般的です。この法律に対する処理を「臨床法務」と言います。取引先の倒産や消費者からのクレームなどの対応に関した、法的処理を行う業務です。しかし、最近は問題が起こる前に、対処する方法が企業内で推奨されています。つまり、従業員に対する教育に、自分達が携わる業務で法律に関連する作業があり、それらを守る事が、重要である事を周知する教育を加えるのです。最近よく「コンプライアンスの欠如」と言った言葉を耳にしますが、それこそ、この社員教育の失敗、欠如なのです。この様な事が起きないようにする事が、企業法務の仕事で、これを「予防法務」と言います。

次に、企業のイメージ戦略として重要な、知的財産権に対する法律事務があります。企業が自社のイメージアップを図るために、キャッチフレーズやパッケージのデザインを決定する時に、関係する法律により規制されている事項に、抵触していないかを調べるのも重要な事です。この様に将来に向かって、企業の経営をサポートする法務の仕事を「戦略法務」と言います。

企業法務で大事な事は「臨床法務」が一番ですが、これからは「予防法務」が重要で、さらに企業業績を伸ばすためには「戦略法務」が必要になってくるのです。

企業法務の始まり

企業法務とは、企業経営において必要な法律に関する、業務を行うことです。戦前でも、企業が活動をする上で、関係する法律はありました。例えば、商法の法令番号は「明治32年法律48号」です。この商法の中には、現在の「会社法」(平成17年施行)も含まれていました。「保険法」(平成20年施行)も同様です。しかしながら、企業としては、各部署ごとに関連する法律に関する、事務作業を行っていて、統括している企業はありませんでした。企業法務が重要視されたのは、総合商社的な物産業者が、取引上の問題が起きないように、法律問題に対処できる部門を作ったのが、始まりでした。こうした仕組みが作られたのは、戦後の事で、高度経済成長期と共に発展してきたのです。

それと、業務上、法律と関係が深いのは輸出入業者です。税関に提出する書類は、法律で決まった書式で提出します。ほかの企業でも、官公庁に提出する書類は法律や、法令で決まった書式があり、それに沿った形で提出します。

戦後の高度経済成長期を過ぎ、リーマンショック後は、消費者も企業活動に敏感になりました。そういった消費者や世間に対する企業の責任が問われる時代がきて、それに対応する専門の部門が必要となり、企業法務部門が、作られる様になったのです。

企業法務の範囲

企業法務とは、最近になって注目された言葉です。企業活動をする上での、関係する法律に基づいて行う事務作業のことです。日本では雇用契約や商売の慣例などは、法律で規定されていたにも関わらず、当事者同士の話し合いで決めていた部分がありました。ところが、近年それでは済まなくなり、労働者や消費者から裁判などが、起こされる事が多くなってきました。そこで、企業側(経営者)も、労使関係や商取引に関する法律の知識を持つ必要性が出てきました。

企業の活動は、労使関係だけでなく、商取引における、取引先やユーザーとのトラブルも多くなっています。それと、企業経営に対する、監視の目も厳しくなってきて、企業の法令遵守(コンプライアンス)が重要視されています。それを踏まえて、契約関連業務、株主総会、取締役会関連業務、ライセンス取得関連、社内危機管理業務、知的財産、商標調査、顧問弁護士や官公庁との交渉などが、主な業務になります。

契約関連業務は取引先との契約や約款、労使関連の就業規則、消費者に対する商取引上の法律などが関連しています。株主総会や取締役会などに関する法律は会社法です。ライセンス取得は許認可に関する法律が関係してきます。社内危機管理に関しては、労働基準法や、民法などが対象になります。知的財産、商標調査などは特許法や商標法、著作権法などが関係してきます。企業が守るべき法律は多岐に亘っています。それらに関する、事務処理が企業法務部門の仕事になります。